西宮 一戸建ての市場規模を昨年と比較
「家が狭いので寝室に夫の机があるのですが、夫が本のページをめくるたびにパサバサと音がするのです。
深夜になればなるほど、この昔が大きくなり、この頃は昼間でも頭の中でこの音がしてガンガンする」夫に献身的な奥さんの症状である。
最近、夫婦の寝室に書斎がある住まいが多いが、これは大変な人権問題である。
妻は懸命に仕事や勉強に励む夫を見て、こうしてじっとガマンする。
夫はこの妻のやすらかな(?)寝顔を見て、安心してさらに夜中まで頑張ってしまう……。
ベッドで本を読むのも同じだ。
いったい妻の睡眠は、安らぎは、どこにあるのだろう。
これで健康を害さない主婦は無神経としか言いようがない。
この点は献身的な妻を持つ夫たちはおおいに反省する必要がある。
この点私も同罪で今は悔いている。
ベッドの中で夜中まで電気をコウコウとつけて本を読むなどは非常識として、どちらかがちょっと目一(合が悪い時などは、特に神経をつかう必要がある。
この夫婦の心づかいが寝室の中でいろいろとあらわれ、夫婦の関係があらぬ方向に行くこともあるのだ。
ある知人の夫婦の場合、五十代になってから寝室を別にしたという。
二十年三十年も同じ部屋、一つベットに寝ていたら、もし一方が欠けた時はどうか、寂しくて耐えられないと思う。
いくら夫婦といっても、互いに同時に死ねるわけではない。
どちらが先に欠けることになる。
残ったほうのために今から一人寝の癖をつけたい、というのだ。
夫婦寝室は、できれば〝夫寝室″と〝婦寝室″に分けるとよい。
分けるといっても、狭い住まいの中では二つの寝室など不可能だ。
そこで、部屋の真ん中に丈夫なカーテンレールを取りつけ、そこに毛布のようなぶ厚いカーテンを吊る。
いわば夫婦の間に水ならぬ幕をさすのだが、これで光や音を結構防げるものだ。
リフォームの時に大々的に引き込み式の引き戸を設けてもよい。
冷たいようだが、こうして夫婦であっても互いのプライバシーを尊重するところから、新たな夫婦関係が生まれるのだ。
夫婦の寝室を夫と妻に分けようと少々手厳しい提案をした。
今度は逆に、夫の書斎と妻の家事室をくっつけて「夫婦室」なるものをつくろうという提案だ。
離したりくっつけたりと勝手なことを言うようだが、この提案は狭い住まいの中で、失われていく夫婦の創造的な関係を取り戻すために、効果的だと信じている。
夫婦の寝室の中に書斎をつくるというのは、一見夫婦が一体で仲良しイメージが強いのだが、実は妻の安眠が妨害されている。
このガマンと愛情がバランスをとっている問はよいが、一度崩れると大変なことになる。
新築の際、蚊の鳴くような声で、「できれば二畳ほどでも書斎が……」という嘆願にも近い夫の声をよく聞く。
妻の「エッ?」という声にかき消されそうで、本当にかき消されてしまうことも多いのだが…。
それでもなんとか、二階の北西の角あたりに二塁の書斎を持つ。
新築当初はさっそく書籍や道貝を持ち込み、机の前で一人でニヤニヤしている夫が多い。
妻が心配してのぞきに来るほどこの二塁が気に入っているのだが、なぜか次第にこの部屋は使われないようになる。
夫婦仲良く夫婦室。
特に一冬を越すと、どうもその傾向が強いようだ。
久しぶりに訪れてみると、机の上は本や物がうず高く積まれ、イスの上も物だらけになっており、とてもふだん使っているようには思えない。
「あれほど欲しくて、そしてよろこんでおられた書斎はどうしたんですか?」答えをわかっていながらあえて聞いてみる。
このことによって、使われない書斎の意味を奥さんにきちっと理解していただくための、私のご主人に対する思いやりなのだ。
いわば″武士の情″。
「いや寒くてね、それに……」「主人はね、本やワープロなどを書斎で使わずリビングのコタツに持ち込んでいるんです。
何のための書斎なのかしら、まったく無駄よ」と、ご主人が何も言わないうちに奥さんが割って入る。
ご当人はまずい話題を出してくれたと言わんばかりに、私を上目づかいでにらむばかり。
「やっぱり……。
でもね、奥さんもお子さんも、ご主人がリビングにいてくれて良かったじゃないですか。
いれば邪魔のようなことを言うけれど、ずっとあの二階の奥にいたらどうですか?心配でしょう?それに不要な物だってあの部屋に置けるし、コタツの上はこうして必要なものだけで整理がしやすい。
ご主人も専用の物置きをつくって良かったですね。
広さも二畳でちょうど良かった」奥さんはきょとんとした顔。
ご主人はしてやったりの二コ二コ顔となり、張り子のトラのように忙しくうなずく。
いつもの光景なのだが、私はこの使われない二畳の書斎をご主人の象徴のようにつくることにしている。
本当は書斎はリビングに近く、できれば奥さんがいつもいる台所や食堂あたりがいい。
まず暖房や冷房が常につけられていて、いつも誰かがいるので寂しくない。
第一台所に近くてお茶のサービスもいい。
また奥さんもご主人の存在が身近に感じられるのがいい。
静かなところが良いとはいえ、小さな家の中でどれほどの差があるだろう。
それより冷え切った書斎に勇気をもって行けるだろうか。
夫の書斎願望に対して主婦の家事室願望が強い。
二畳ほどの家事コーナーを求めるなら、夫の二畳の書斎と合わせて合計四畳の「夫婦室」をつくることをおすすめしたい。
本棚やワープロなど互いの道具を共有すれば、三畳ですむかもしれない。
台所の隣りでお茶やコーヒーを入れるのもいい。
奥さんもいて、掃除も行き届く。
第一暖房も効率的で身も心も暖かい夫唱婦随、いや婦唱夫随の愛の書斎となる。
これこそ創造空間。
リビングとは〝生活する〟ところリビングルームとはいったい何をするところだろうか。
まさにLIFE・INGで生活するところだ。
邦訳で「居間」とするところがまさに日本的だ。
要するに〝居る場所〟なのだ。
〝生活する所″という言葉はなんとなくアクションがあり、生きていくといった活力を感じる。
しかし、〝居る所″という言葉は、ただ居るだけでよいのかといぶかりたくなるほど消極的な感じがする。
この点は現代的な生活でも、日々を過ごすとか送るといった、今日を生かされているといった感謝の哲学によっているのであろうが、この解釈をもう少し深める必要があるのではないだろうか。
時を無為に過ごし、過ぎ去る日をただ見送っていては何にも残らない。
本当は今日生かされていることをよろこび、今を充分に大切にし、明日を迎えることが真の解釈だろう。
そうすると、今日のわれわれはあまりにも今を犠牲にし、無為に過ごし、明日に賭けすぎているのではないだろうか。
若い夫婦は子供の成長を願い、有名校に入れ有名企業に入れ、楽な生活をさせたいと願い、今の生活を犠牲にする。
中年を過ぎると今度は楽な老後生活を考え、今を犠牲にしてせっせと貯える。
いったいいつになったら今日を生かされていることを、よろこび、感謝できる日が来るのだろうか。
住まいをつくる時、この点がいつも気になるところだ。
私の嫌いな言葉に「建前と本音」というのがある。
日本人の奥の深い解釈方法だというのだが、国際化社会になってみると、どうも都合のよいごまかしの方便としかとられないことが多い。
壁式の住まいとなって、居間がドアに囲まれたリビングとなると、この点のあいまいさがポロポロ出てくるのだ。
なるほど居間は、建前では家族の居る間でみんなの楽しいリビングのはずだ。
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